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 死別によって生じる悲嘆は、正常なストレス反応であり、それ自体は病的なものではありません。しかし、ときに悲嘆反応の持続期間や強度が通常の範囲を超える“通常ではない悲嘆”がみられ、“複雑性悲嘆”と呼ばれています。以前は“病的悲嘆”と呼ばれることが多かったのですが、2000年代以降は、“病的”という表現がやや侮蔑的であることや、“通常”と“病的”の境界が明確ではないことを理由に、“病的悲嘆”に代わって“複雑性悲嘆”という用語が使われることが一般的となっています。

 近年の研究では、複雑性悲嘆は、高血圧やがん、心疾患、自殺の危険性を高めると報告されています。また、うつ病や心的外傷後ストレス障害(PTSD)など既存の精神疾患との関係について、重複しつつも独立した症候群であるとの認識が拡がりつつあります。しかしながら、複雑性悲嘆の診断学的位置づけとして、現時点では精神疾患としては位置づけられていません。DSM-5では根拠となるデータが不十分との理由で、公式な精神疾患の診断基準としての採用は見送られましたが、「持続的複雑性死別障害」と称する疾患名で基準案が提示され、有病率はおよそ2.4%~4.8%であり、男性よりも女性に多くみられると示されています。

 治療に関しては、複雑性悲嘆に対する抗うつ薬の治療効果を疑問視する声もあります。複雑性悲嘆に対する有効な治療法としては、認知行動療法を基盤とした複雑性悲嘆治療が開発されており、日本でも一部の研究機関において試行されています。

「複雑性悲嘆研修会」については「こちら」をご覧下さい。